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【監獄の妖精】
 そこは俗に「監獄」と呼ばれ、多くの亡者魔物の徘徊する魔都グラストヘイムの一角。多くの戦士たちが魑魅魍魎を相手に死闘を演じ、様々な冒険譚がまことしやかに語られる、そんな場所だった。今、彼らの間で囁かれるひとつの噂が広がりつつあった。


監獄の妖精

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「監獄の妖精」(7)

「くっ、くくく……
「どぅわはははは……!!」

 おおよその反応は読めていた、とは言いながら、肩を震わせて耐えるエスタに、兄弟たちの容赦ない嘲笑が降り注いでいた。

 ここは首都プロンティア城のとある1室。てんでバラバラに各地に散ってしまいがちな兄弟たちではあったが、相次ぐ激戦の合間、その束の間の休息を得られる共通の場として長兄であるFlowLight *1 が用意したものだ。固い絆で結ばれた兄弟たちが諍うことなどありはしなかったが、沸き起こった問題などを話し合い、対策を練る必要ができた時などには家族会議へとその機能を変えることもあった。

「う゛~~」

 「監獄の妖精」に不条理なファンクラブ……たしかに馬鹿げた話だった。気心の知れた兄弟たちに、いやだからこそ笑われても仕方ないのだろうとは思う。

しかし……

「なんで、お前まで笑ってるんだぁ、焔ぁ~~!!!」
「きゃはっはははははぁ……

(それも飛びっきりの馬鹿笑いをしやがって……

「まあ、ええやろエスタはん *2 、焔はいつでもこんなんやから(笑)」
「そうなのだ、こんなん……あ゛、それはいったいどういう意味なのだ? 沙希姉ちゃん?」

「ほらな、エスタはん?」
「わかったよ、はぁ……(疲)」

「ところで、」

 さすがに、いつまでもお茶の間劇場よろしく馬鹿話ばかり続けていくのも、名門サキ家としてはどうか、とでも思ったのだろう。アルケミ *3 のジーンが話題をもとに戻そうとした。

「妖精というからには、たしかに変わっているね。兄ちゃんたち、何か心当たりは?」

 ジーンからすれば、エスタを含め大方が兄にあたるわけだが、名前をつけずにこう呼ぶ場合は、上からFlowLight、RedEye *4 、そして一家で最初に転生を果たしたリオン *5 の3人を指し示すのが、なかば暗黙の了解となっていた。今この場に集っているのは、長兄たるFlowLightとリオンの2人だったが。

「それはなぁ……
「うんっ」

 さすが長兄、兄弟たちの期待の眼差しが集中する。

「私が知っているとでも思っているのか?」

……ドテツ

「なんだよ、兄ちゃんっ! 期待させといて!」

「だいたい、監獄のことなら、私より、リオンやエスタの方がずっと知っているはずだろう? 他人を当てにするのは良くないなぁ」

「まあ、乗りかかった船だ。見事『妖精』の正体を突き止めてみるんだな。まがりなりにも『賢者』の名を冠したセージなんだから」

「リオン兄まで……。うーん、そんなこと言われてもなぁ」

 燐光に包まれて姿かたちもはっきりせず、それ以前にあっという間に消え去ってしまうような相手の正体といっても、どこをどう突いていいのか検討もつかなかった。

(捕まえる? どうやって?)

----監獄の妖精(8)につづく

*1 ゲーム内での名前は「SAKI=FlowLight」最初の方のキャラで、当時は「SAKI=なにがし」という命名をしたいた。小説ではちょっと使いにくいので後半の「FlowLight」で呼ぶことにする。

*2 そう、関西弁。ゲーム内でも沙希はベタベタの関西弁です。

*3 「ジーン=カシム」アークのすぐ下の弟でアルケミスト。商人の上位職のひとつだが、剣を持って戦うだけでなく、回復剤(ポーション)を作ったり、それを投げつけたりして相手を回復させるスキルがある。

*4 ゲーム内では「SAKI=RedEye」古いキャラであることがネーミングから想像できる。ゲーム的には、おそらく、兄弟たちの中で一番不遇な扱いをされているキャラ。長男であるFlowLightにつづく一家のナンバー2のはず。

*5 「リオン=マクミラン」一家のナンバー3。しかし、一番頑張って育ったキャラで、小説中でも最も強く、一家のエース的な存在であるウィザード。「転生」とは、一度レベル99まで育ち、その後通常よりも有利な条件で再びノービスから育成をした、ということ。転生後はさらに上位職にあたる「ハイウィザード」となり、覚えることのできるスキルも増える。


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