エピローグ
シャボンのようにふんわりとした気持ちが心を満たし、導かれるように目を覚ました少女に、それに気付いた娘が声をかけた。
「どうしたの? 目がさめた?」
一瞬、きょとんと、そして見回すように視線を動かしてから、声の主に返事した。
「うん、姉さま。
……夢をみてたの」
「あら、どんな?」
少し頬を赤らめて夢の中身を語ろうとする少女を、興味深そうに促した。しばらく前から、なにやら楽しげな夢をみているらしく、それでいてその内容を語ろうとはしなかったこの少女が、今回ばかりは何か言おうとしている。
「あのね、とんがり帽子のセージさんに遊んでもらったの」
(くすっ)
「そう、よかったわね」
「うん!」
すべて見るものを魅了するに違いない、そんな笑顔に、娘は少女の髪を撫でて再び促した。
「じゃ、もう一度寝ましょうか」
「は~い」
(明日は、あなたもプリーストに転職するんだしね、セレン
*1
……)
--この日を境に、監獄を賑わした謎のヒール魔はぷっつりとその姿を消す。魑魅魍魎の跋扈する監獄に、再び妖精が戻ってくるのは、なおいくばくかの歳月を待つことになろう。
了
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*1 フルネームは「セレン=フレイヤ」。この小説の中で生まれた存在でしたが、あまりに気に入ったのでゲーム内でも作ってしまいました。周囲にも人気は高く、数あるキャラの中でも、もっとも受けがいい存在です。
「あとがき」
けっきょくはドタバタ活劇で、しかも夢落ちという非常に芸のない終わり方でした。実際には夢などではなかったことにして、他の小説に続くわけです。
このままだと「姉様」の存在が気になりますもんねぇ。
ともかく、ラグナロクオンラインの二次小説として最初に書き始めたのがこの「監獄の妖精」でしたが、完成したのは8番目です。その間にも多くのキャラクターがゲーム内に生まれ、育ち活躍しています。
そうして増殖したキャラたちが、ふたたび数々の小説の中で活躍することとなるわけですが、そのプロローグともいうべき作品といえるでしょう。
ともかく、今精力的に書いているのはこの方面の小説だったりします。今しばらくお付き合いくださいませ。
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