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【監獄の妖精】
 そこは俗に「監獄」と呼ばれ、多くの亡者魔物の徘徊する魔都グラストヘイムの一角。多くの戦士たちが魑魅魍魎を相手に死闘を演じ、様々な冒険譚がまことしやかに語られる、そんな場所だった。今、彼らの間で囁かれるひとつの噂が広がりつつあった。


監獄の妖精

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「監獄の妖精」(6)


「きゃはははは……、この子がエスタさんの妹さん? ん~~~かっわいい(>_<)」
「お初です。いつもお兄様にはお世話になっています。クルセ *1 のラキです」

[PIC]
「よろしくなのだぁ(^_^)b こちらこそ、あんぽんちんな兄ちゃんがお世話になってるのだ」

「あ、あんぽんちん……って(汗)」

 エスタと焔が戻った先は、監獄内でも比較的モンスの立ち寄ることの少ない通路の片隅で、エスタをはじめ同じセージの祇園、ラキの共通の集合場所にしている一角だった。

「あ、まだ名前を言ってなかったわ。セージの祇園枝垂桜です。『しーちゃん』と呼んでくれていいわよ、焔ちゃん」

 一瞬、きょとんとした表情の焔だったが、

「『しーちゃん』はあたしの仲良しの紫遠 *2 ちゃんが居るからダメなのだ、鈴の姉ちゃん *3

「す、鈴って……」(何よ、この子)
「沙希姉ちゃんとおんなじなのだぁ」
「あ、あら、そうなの……
「綺麗で優しい沙希姉ちゃんなのだ(と紹介しないとしかられるのだ)」

 ニコニコと、まるで罪のない表情で社交辞令の社の字も知らない焔に、今度は祇園の方が困惑してしまう。

「え……えろう可愛らしい……妹はんやおまへんか……エスタはん」
「んっがぁ!」

 眉間の皺は隠しようもなく、興奮したときにはなぜか京言葉が無意識に口をついて出てくる祇園は、それまで考え事をしていたのか、沈黙を続けていた隣のエスタの首元を締め上げるようにして揺り動かした。

(な、何だ? またあの不条理なファンクラブの連中か!?)

 状況把握に至る前に、激しく揺り動かされたエスタの頭の中は、せっかく回復したばかりの身体が再び生命の危機に瀕していることを本能的にしか認識できない状態に陥っていた。

「え、エスタさん、大丈夫ですかぁ」

 やはり、そこは馴染みの監獄仲間。一瞬(? おっと)躊躇したとはいえラキが決死の勇気(? なんだこいつ)を振り絞って祇園とエスタを引き離した。目の前で人死にが出るのを傍観するのは、きっと寝覚めのいいことにはなまい。その常識が、エスタを死の渕から呼び戻すこととなった。

「げっ、ゲホゲホ… た、助かった。キさん、あなたは命の恩人です」
「いやいや、どういたしまして。いやはや良かった。」

「はぁハア、もう少しで訳も分からないような死に方をするとこだった。
 まったく、いきなり何てことをしてくれるんですかぁ!?」

「いやね、ひょっとしたら……」(どうやってごまかそ……
「うん?」

[PIC]
「そ、そや。ほらっ、死にかけたら、また妖精はんが来てくれるかも知れまへんやろ?(大嘘)」
「(じとぉ~~)あのねぇ……(汗)」

「あ、なぁるほどなのだぁ(嬉) それじゃ……

「(ピクツ)何詠唱してんだ、焔! やめんかぁあ!!!!」
「きゃ!」

…………バ、バシバシバシッ!

「あんぎゃぁ!」

……プスプス

「あ~、びっくりさせるから全力でファイヤーボルト *4 落としてしまったのだ」

……ツンツン

「大丈夫?」
「これは、ちょっと危ないかも知れまへんなぁ」

「え、エスタさん……(ってこんなキャラでしたっけ/汗)」

「ご、ごめんなのだぁ」

 焔も、さすがに悪ふざけが過ぎたかと思ったかどうか、少ない魔力ではあるものの、精一杯のヒールを施した。

「きゅぅ~~(なんでこうなるんだぁ)」


----監獄の妖精(7)につづく

*1 クルセイダー。同じ剣士の上位職である騎士(ナイト)よりもごつごつしている。神の加護を受け、防御力が高いらしい。

*2 フルネームは「神撫 紫遠」焔よりは少し年上のウィザード。(当時はまだマジシャンだったかも)「シオン」という読みから近所(?)では「しーちゃん」で通っていた。

*3 「鈴」とは、ゲームでも一番と名高い萌頭装備である「大鈴」のこと。どうやら沙希はこの祇園と同じ大鈴をしているらしい。

*4 ファイヤーボルト。先ほどのライトニングボルトが電撃であるなら、これは魔法による火矢の攻撃スキル。


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