MODE: GUEST
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6 ……パチパチッ 既に夜半も過ぎ、夜明けもそう遠くないとはいえ、頼りなく焔を保つ焚き火の番をあえて受け持つ二人がいた。 「セレンの導きかしら」 「かもな……」 誰に知られるでもなく、不可思議な儀式に直面した一行は、その感慨の覚めやらぬ中にいた。当の小さなマジシャンは、疲れもあり金色をした髪の少女と寄り添うように眠っている。 「ほんとう、姉妹みたい」 目を細めて少女たちを見つめ、起こさないように髪を撫でるネーナの瞳には慈愛を満たすに十分すぎるほどの温かみがあった。 「あながち、違わないかも知れないぜ」 「え?」 シルヴィの言い様に、当惑したネーナが振り向いた。 「もとから、セレンだって尋常じゃないんだ。この子も……ミサキと何らかの絆で繋がっていても、それを不思議とは思えないな。今じゃ」 「そ、そうなの? ……そう、かも知れないわね」 カプラであるネーナよりも、ウィザードであるシルヴィの方が、先ほどの儀式の経緯と、その意味--全容がわかるわけではないが--不可思議な事柄のいくつかを指摘できるのは道理でもあった。 「この子、一緒に連れて行けないかしら」 「そうだなぁ、無理というか、目的地がまったく逆だぞ?」 「そうね、旅に出たばかりなのにゲフェンに舞い戻りになるわね」 (ふぅ) ネーナはため息とともに言葉を繋いだ。 「でも、セレンは離れようとしないかも」 「ぷはっ、ありえるねぇ、それ。あはははっ」 そのとき、 ……パキッ 「!」 跳ね上がるように立ち上がったシルヴィは突然の気配に身構え、ネーナに目配せをした。頷くとネーナは寝入る二人に手を添え、声をかける。 「起きて、ミサキ、セレン……」 その声は、決して朝を告げる穏やかなものではなかった。 「う、う~~ん、なあに? ネーナ?」 いくつかの修羅場を経験してきたことは明らかな、険しくも凛々しい表情でシルヴィが自分が守護すべき3人の前に立って気配の在り処を見据えた。 (こ、これは……殺気) 「ど、どうしたの?」 そのただならぬ雰囲気に、ミサキも眠気を飛ばし、シルヴィの視線の先に目をやった。 ……ガサッ、ガサッ 恐怖とともに、その足音を隠すこともせずに近づき、姿を見せたそれは…… 「さ、彷徨う者っ!」 「な、なんでこんな所に!」 魔境グラストヘルム以外ではまず出くわすはずもない、この恐怖を体現する亡者がいったいどういうわけでこんな森の中に現れたのか。 しかも3体……恐慌をきたす一歩手前のミサキではあったが、このような危険を予期していなかったわけでもないというふうな二人の保護者がいた。 「しまった、まさかこんな所にまで……」 舌打ちをし、詠唱のために身構えるシルヴィは、同時に背後の3人の気配に意識を残す。そう、逃げるための準備に。 暗黙の了解というものがある。もしもの時は……その自らの使命に、なんら臆することもない。 --スゥ 「!」 まるでその場から掻き消えるように、3体のうち両側の2体が動いた。疾い…… 「くっ、ファイヤーウォール!」 火壁を生み出す短詠唱呪文。目で追うこともままならない俊足の魔物に対し、長年の勘を頼りに正面に防御壁としての火壁を設置した。 「ま、まだっ」 動いたのは2体。おそらく回り込んだであろうもう1体の動きを読んで右手後方、ミサキたち3人のための火壁を配した。 「火炎の業をもってかの敵を撃て、ファイヤーボルト!」 「しゃ、しゃあ~~っ!」 奇声を上げるのは正面の火壁の向こう。シルヴィを狙った1体は火壁に遮られ、その足を止めた隙に追撃の魔法に焼かれて悶絶した。しかし、いま一体は、 「きゃあっ!」 身をもって守護すべき二人の間に立ったネーナは、疾風をもって繰り出される鋭い斬撃に吹き飛ばされた。 「ネーナ!」 「うぁ、ああああっ!」 怯える二人の少女。身構える余裕もなく、凶刃の担い手を見るミサキとその体にしがみついて震えるセレン。 「やっ、やめろっ!」 シルヴィが絶叫し、悲鳴にも似たミサキの声がこだました。 「だ、だめーっ!」 |
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