MODE: GUEST
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7 ……ガキッ! 「?」 か弱い少女の身など、二人まとめて真っ二つにしようかというその刃はしかし、その目的を達すると思われた刹那、二人に死をもたらすには至らなかった。にわかに淡い薄紅色の光がミサキとセレンを覆い、死の名を有するはずのその凶刃を弾いた。 その斬撃を、間近に見据えながらすでに恐怖のために気を失っているセレンを抱えた小さなマジシャンの、その目にも生気はなかった。あるいはともに気を失っていたのだろうか。 しかし、そんな無表情のままセレンを抱えて後方に跳び退る。 「ファイヤーウォール!」 「ファイヤーボルトッ!」 同時に先ほどシルヴィが見せたのと同じ魔法、火壁を彷徨う者の足元に生み出してかの敵を弾き飛ばし、寸瞬の間も空けずに追撃の火矢(ファイヤーボルト)で仕留めた。 (セイフティウォールか……) マジシャンの持つ魔法の中でも特別なひとつ。ブルージェムストーンを触媒として発生させる究極の防御壁はいかなる斬撃をも防ぐ。しかし、今しがた火の精霊との契約を済ませたばかりのミサキが、何ゆえ属性も異なる念の魔法であるセイフティウォールを使えるというのだ。機会があれば教えるつもりではあったものの、火壁や火矢にしたところで、まだ呪文として覚えてはいないはずのものだ。 それどころか、今しがた見せたミサキの立ち回りは…… (この子はいったい……) 「み、ミサキ?」 ……ふぅー 右腕を押さえながら駆け寄るネーナを待たず、まるで崩れ落ちるようにその胸に倒れこんだ少女を、安堵よりは驚愕の目で見つめる二人の守護者。どうやら今度は本当に気を失ったようだ。 「あなた、まさか無意識に……」 「うわぁーっ!」 「! シルヴィ!」 もとより、たとえ1体であったとしても決死の戦いであったはず。連携して攻撃を仕掛ける2体の彷徨う者を退けただけでも奇跡に近い。二人の少女の無事に気をとられたシルヴィは迂闊にも最後に残った1体の動きに気付くのが遅れた。凶刃のために深手を負い地に這う。 「ぐっ……、ネーナっ」 苦楽をともにし、同じ使命を負う盟友に最後の声をかける。 (わかっているわ……) いずれ、その想いが伝わらないわけもなく。ネーナは気を失う二人の少女を抱き寄せた。 「出合ったばかりだというのに、ごめんね、ミサキ」 思えば、たった数刻とはいえ不思議なことばかりの夜だった。火の主精霊を呼び出した初心者のマジシャン。気を失ったにも関わらず、まだ憶えてもいないはずの魔法を駆使して凶刃を退けた少女。 あずかり知らぬ謎を身に刻むのは自分ばかりではなかったのか、そのすべてを無意識のうちに気付いていたに違いない、自分たちの非保護者であるセレン。 そうして出会った二人の少女……。 馳せる思いとともに1つの技を成す。 「セレンをお願い」 淡い光が少女たちを包み、転送ゲートが開く。 セレンを護るという自分たちの使命がここで終わったことを知る。志半ばとはいえ、その引き継がれた運命の行く末を確信して。 |
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